iPhoneでLog撮影する方法 | Log撮影とは?メリット・デメリットも解説

動画撮影

本格的な映像制作やLog撮影に興味があるけど、高額な一眼レフカメラは高くて手がでない・・・

iPhoneでLog撮影に挑戦したいけど何から手を付けたら良いか分からない・・・

そんな人に向けて、本記事前半では、Log撮影のメリット、iPhoneでLog撮影する方法、撮影後に簡単にできゆ色編集(カラーコレクション)の方法を、

記事後半は、Log撮影についてより詳しく知りたい人向けに、Log撮影に関する少しマニアックな解説をします

Log撮影するメリット

Logはプロの映像制作に使われる映像の収録方式です

Logで撮影された映像は、ダイナミックレンジが広く(=暗部から明部まで広く映像を収録できる)、色編集の自由度が高いことが特徴です

結果として、通常のカメラで撮影した映像では難しい深みのある映像表現ができることがLog撮影のメリットです

広いダイナミックレンジ

次の図は、本記事で紹介するFiLMiC ProというカメラアプリでLog撮影した映像のダイナミックレンジとiPhone標準カメラのダイナミックレンジを比較したものです

FiLMiC Proで撮影したLog映像の方が幅広く明るさを表現できていることが分かります

ダイナミックレンジが広いと白つぶれ、黒つぶれを抑制することができます

色編集の自由度

以下の動画はRichard Lackeyというプロの映像編集家が、iPhoneとFilMiC Proを使ってLog撮影した映像をDavinci Resolveという動画編集ソフトを使って色編集(カラーグレーディング)をしたテスト映像です

iPhoneで撮影したとは思えない映画のような質感の映像に仕上がっています

もちろん、これはプロの高度な編集テクニックがあってこその結果ですが、みなさんが持っているiPhoneでここまで映像を作ることのできるポテンシャルがあることにワクワクしませんか?

Log映像は本来の色に戻す編集が必要

Log撮影した映像はコントラストと彩度の低い眠たい映像として収録されるため、動画編集ソフトを使って、本来のコントラストと彩度に戻すカラーコレクションと呼ばれる作業が必要になります

カラーコレクションを行うには、ある程度の色編集の知識と色編集を行うことのできる動画編集ソフトが必要な為、初心者にとって少し難易度が高いです

カラーコレクションや自分の好みの色味に編集するカラーグレーディングをすることがLogの魅力であり、楽しいところではあるのですが、、、詳しいやり方はまた別の機会に解説するとして

本記事ではLUT(Look Up Table)と呼ばれる色の設定ファイルとiPhone/iPadの動画編集ソフト:Lumafusionを使って、初心者でも簡易にカラーコレクションを行う方法も解説します

Log撮影できるアプリ

iPhoneでLog撮影に対応しているカメラアプリはFiLMiC ProとMomentのPro Cameraです

FiLMiC Pro-マニュアルビデオカメラ

FiLMiC Pro-マニュアルビデオカメラ
開発元:FiLMiC Inc
¥1,840
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Pro Camera by Moment

Pro Camera by Moment
開発元:Moment Inc.
¥610
posted withアプリーチ

どちらも一長一短で甲乙つけがたいですが、本記事でFiLMiC Proの使い方を中心に解説します

理由は

  • Log撮影の性能がMomentより優れている
  • メーカー公式のLUTが提供されていてiPhone/iPadだけで色の編集(カラーコレクション、カラーグレーディング)しやすい
  • iPhone12シリーズであれば10bitのLog撮影かできる

の3点です

一方、MomentのPro Cameraのメリットは

  • FiLMiC Proよりも価格が安い
  • 動画撮影だけでなく写真のマニュアル撮影とRAW撮影に対応している
  • 同社の外付けレンズとの連携が考慮されている

の3点

iPhone12 proがPro RAWに対応した為、最近はMomentのアプリの出番が減ってますが、写真用のカメラとして特に重宝してます

みなさんの好みのアプリを選択して下さい

Filmic Proを使ったLog撮影の方法

Log撮影に挑戦する前にカメラの基本設定を理解する

Log方式で撮影すること自体は、アプリの設定をするだけなので特別に難しいことではありません

ただし、カメラの適切な設定を理解せず撮影をしてしまうと、Log撮影しても本来の画質を得られない可能性があります

フレームレート・露出(絞り・シャッタースピード・ISO感度)に関する基本的なカメラ設定を理解した上で、Log撮影に挑戦することをお勧めします

カメラの基本設定についてはこちらの記事の後半でも解説をしていますので、合わせてご確認下さい =>FiLMiC Proの使い方 | 基本設定を徹底解説

FiLMiC Proの使い方 | 基本設定を徹底解説
FiLMiC Proは初心者にとって使いこなすことが難しいカメラアプリです。本記事ではFiLMiC Proの性能を100%引き出しシネマティックな映像を撮影するための使い方を解説します。

FiLMiC Proの設定

Log撮影の機能を有効にするには、アプリ本体を購入後アプリ内でシネマトグラファーキットを追加購入する必要があります

以下の画面が表示される場合には、アプリ内でシネマトグラファーキットの購入手続きをお願いします

詳しい情報をタップすると購入画面が表示されます(2021年5月現在:1,720円)

ビット深度の設定

 iPhone12シリーズ以降とiPhone11シリーズ以前の機種で選択できるビット深度が異なります

1. 画面右下の設定ボタンを押す

2. iPhone12シリーズを使っている人

→8bit/10bitのどちらも選択することができますが、より高画質な10bitの選択を推奨します

  1. iPhone11 シリーズ以前の機種を使っている人

→8bitのみ選択できます

ホワイトバランスの設定

必ず必要な設定ではありませんが、設定撮影中にホワイトバランスが変わってしまうことを防ぐ為に、ホワイトバランスを固定する設定推奨します
個人的には以下2つのオートホワイトバランスのどちらかを使うことをおすすめします
  1. AWB(オレンジ): 録画ボタンを押した時のホワイトバランスで固定

  1. AWB(赤):その瞬間のホワイトバランスで固定

ガンマカーブ(Log)の設定

選択したビット深度によって選択できるLogの方式が変わります
・ビット深度:10bitを選択した場合はLog V3
・ビッド深度:8bitを選択した場合はLog V2
Logとしての性能は10bit Log V3の方がLog V2より優れていますが、Log V3はiPhone12シリーズユーザーしか使えない点ご注意下さい
  1. ビット深度:10bitを選択した場合はLog V3を選択

  1. ビット深度:8bitを選択した場合はLog V2を選択

ゼブラ・ヒストグラムの設定

Log撮影では特に適正露出で撮影することが大切です
ゼブラとヒストグラムを参考に、シャッタースピード、ISO感度、NDフィルターを使って適正な露出に設定します
必ず必要な設定ではありませんが、露出調整する際の客観的な基準になるので、活用することをおすすめします

8. オーバー/アンダーを可視化するゼブラの機能をオンにします

9.ヒストグラムの表示

中央下段のエリアをタップしてヒストグラムを表示させます

下記の順で表示が切り替わります

標準表示 → ヒストグラム → RGBごとのヒストグラム → ウェーブフォーム

露出調整

先ほど設定したゼブラ・ヒストグラムを参考にシャッタースピード・ISO感度・NDフィルターを使って適正露出になるように調整します
露出の調整方法についてはこちらの記事も参考にしてください => FiLMiC Proの使い方 | 基本設定を徹底解説

10. 露出オーバー(白飛び)の場合

  1. 露出アンダー(黒つぶれ)の場合

  1. 適正露出の場合

露出オーバーとアンダーが混在する場合はどうする?

例:空は白飛びしているが影の部分は黒潰れ

Logはダイナミックレンジが広いことが特徴なので、通常の撮影方法と比べれば露出オーバーとアンダーが混在することは少なくなりますが、仮に露出オーバーとアンダーが同時に起きた場合には、

露出オーバーを優先して抑えることをおすすめします

黒つぶれはそもそも暗い領域なのでごまかしが効きますが、白飛びは真っ白になってしまい後から編集で救済する事が難しい為です

適正露出に設定できたら右下の録画ボタンを押して撮影して下さい

Log映像のカラーコレクション:LUTを使った簡易的な方法

FiLMiC ProオフィシャルのLUTとLumafusionというiPhone/iPad用の動画編集ソフトを使った、簡易的なカラーコレクションの方法を解説します

LumaFusion

LumaFusion
開発元:Luma Touch LLC
¥3,680
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カラーコレクションは個性的な色味を出すことが目的ではなく、人間の目で見た実際の映像と同じ色味や明るさに調整して、その後に行う、色に個性を出すことを目的としたカラーグレーディングを行いやすくすることが目的です

作業自体は簡単で、Lumafusion 内でLUTと呼ばれる色の設定ファイルを適用するだけで基本設定は完了です

撮影時のホワイトバランスと露出の設定が適切であれは、撮影現場で自分自身が見ていた絵に近い映像を得ることができます

LUTを適用しても不自然な明るさと色味であった場合には必要に応じて明るさ、色味の補正を行います

自然な色だな、実際に自分の目で見た色と明るさと同じだな、と感じられたらカラーコレクションは成功です

Lumafusionを起動したら

1.プラスボタンを押して新規プロジェクトを作成します

2.プロジェクト名を入力し、フレームレート、フレームアスペクト、色空間を設定します

〈推奨設定〉
フレームレート: 24fps
フレームアスペクト: 16:9
色空間:
・10bit Log V3 → Rec 709 10bit を選択
・8bit Log V2 → Rec 709 を選択

3. 動画をタイムラインに取り込むために、ビデオをタップします

4. 撮影した映像を選択してタイムラインにドラックします

5.タイムライン上まで動画をドラッグしたら指を離すと動画をタイムラインに配置できます

6. 配置された動画をダブルタップして詳細編集画面を開きます

7. 開いた詳細編集画面下の右にあるFXを選択した後、キューブ(立方体)のアイコンをタップします

8. LUT(色の設定ファイル)の一覧が表示されるで、動画の素材が10bit Log V3の場合はdeLogV3を、8bit Log V2の場合はdeLogV2を選択します

ホワイトバランスと露出の設定が適切であれば、簡易的なカラーコレクションはこれで終了です

色味が不自然な場合には追加で補正を行います

9. 絵の具パレットのアイコンをタップします

10. オリジナルをタップします

この設定画面では明るさ、色味の細かな調整をすることができますが、本記事では細かい説明は割愛して簡単な色味の調整について解説します

11. オリジナルのタブの右端のアイコンをタップしながら上にドラッグして、オリジナルのタブとLUT(deLog)のタブの順番を入れ替えます

編集の効果か上から順に(オリジナル→deLog)の順に反映されます

これは好みの範囲と思いますが、細かい色味の補正を行った後にLUTを反映させた方が色味の劣化が少ないように感じるので、私自身はこのように順番を入れ替えます

13. オリジナルのタブをタップして詳細の設定画面を開いたら画面を下にドラッグし色味の調整バーを表示させます

14.今回のケースでは白い壁が緑がかってしまっているのでグリーンを1.00→0.99にし色味をマゼンタ側に動かします

※個人の主観になりますが、LogV3用のLUTはグリーンが強く出るように感じるので、LogV3のLUTを適用する場合は、基本設定としてグリーンを1.00→0.99にする設定を行なってます

以上で簡易的なカラーコレクションは完了です

▼10bit Log V3と8bit Log V2の仕上がりはこんな感じです

Log撮影・10bitの深掘り

※Logの概念を理解していただく上で、記事の内容に大きな間違いは無いと考えておりますが、不正解な内容がありましたら当ブログまでご一報下さりますようお願い致します

動画のビット深度

Logについて深掘りをする前に動画のビット深度について簡単に解説します

ビット深度とは動画の1ピクセルあたりの情報量を示す値で8bit、10bitで表現します

ビット数が大きいほど、色・グラデーションをきめ細かく表現することができます

  • 8bitの場合は2の8乗の256段階で
  • 10bitの場合は2の10乗の1024段階で

RGB(赤、緑、青)の明るさを表現します

*厳密には、動画はRGB(赤・緑・青)ではなくクロマサンプリングという手法で記録されますが、本記事では便宜上RGBの記録で説明しています

カメラのダイナミックレンジは人間の目より狭い

カメラがとらえることのできる明るさの範囲(ダイナミックレンジ)は、人間の目がとらえることのできる明るさの範囲よりかなり狭いです

例えば、

逆光のシチュエーションでは、人間の目には明るいところも暗いところもしっかりと見えているのに、カメラて撮影すると、明るいところが白飛びしたり、暗いところが黒つぶれしてしまうことが起こります

これは、カメラのダイナミックレンジか人間の目より狭いことが原因です

カメラのダイナミックレンジを広げるには?

デジタルカメラのダイナミックレンジは、搭載されているセンサーの性能とカメラ内部の処理性能で決まります

ここではカメラの内部処理でダイナミックレンジを広げることを考えます (FiLMiC Proのガンマの設定に当たります)

ビット深度が8bitの映像は、黒から白までの明るさを256段階て表現する必要があります

※実際のカメラの処理は下記のようなリニア(直線的)な処理ではありません、便宜上、下記の通り表現しています

仮にカメラの処理でダイナミックレンジを2倍にすると、より広い範囲の明るさを同じ256階調で表現することになるので階調が足りなくなります(1階調あたりの明るさの変化が大きすぎる)

ざっくり

階調が足りたない=色を表現しきれない

と考えて下さい

そこて、限られた階調の範囲で、広いダイナミックレンジを確保しつつ、できる限り実際に人間の目が見ている映像に近い色を記録する方法として考えられたのがLogです

Log撮影=人間の目の特性を生かしてダイナミックレンジを広げる方法

Logは人間の目の特性をうまく利用しています

暗い部屋でろうそくの明かりがある状態を想像して下さい

暗い部屋でろうそくの数を一つずつ増やした時に、少ない本数の時には明るさの変化を感じ取ることができますが、ろうそくの本数が増えれば増えるほど、人間の目はその明るさの変化を感じ取ることが難しくなります

人間の目は暗いとろこの明るさの変化には敏感で、明るいところの明るさの変化には鈍感な特性かあります

この人間の目の特性を利用して、例えば、日中の空のような明るい領域には、割り当てる階調減らして、人間の目の感度が高い領域(中間より下に)に多くの階調割り当て広いダイナミックレンジを確保するのがLogの仕組みです

Log撮影のデメリット:バンディング(階調飛び)

Log撮影した映像はその特性上、空のような明るく微妙なグラデーションがある領域にバンディングと呼ばれる階調飛びが発生しやすい弱点があります

空に割り当てられる階調が少なく、微妙なグラーデーションを表現しきれず、縞模様のような階段状のグラデーションになってしまうことがあります

少し分かりにくいですが以下のキャプチャ画像の空の部分にバンディングが発生しています

バンディングの解決手段:10bitのLog撮影

この問題の解決策の一つがより高いビット深度で映像を記録をすることです

iPhone 12シリーズから、従来の8bitの動画収録だけでなく10bitの収録に対応しました

これまで解説してきた通り、10bitの収録により従来の256階調から1024階調に大幅に表現できる階調数が増加します

これにより、8bitで発生していたバンディングある程度抑制することができます

以下の動画でFilMiC Proの8bit/10bit Logの比較を行いました

10bitはカラーグレーディングで真価を発揮する

10bitで収録した映像は8bit映像と比較してより多くの色情報が含まれているので、カラーグレーディングの工程で色を大きくいじっても映像が破綻しません

表現できる色の数は

8bitの場合:約1600万色

に対して

10bitの場合:約10億色

と10bit収録することにより表現できる色の数が大幅に増加します

これが10bitで収録するメリットです

*厳密には、動画はRGB(赤・緑・青)ではなくクロマサンプリングという手法で記録されますが、本記事では便宜上RGBの記録で説明しています

最後に

ここまで解説してきたように、高価な一眼レフカメラを買わずとも、iPhoneと専用アプリを使って手軽にLogの撮影と編集をすることができます

さらにiPhone 12シリーズであれば、ソニーのα7S3、キャノンのEOS R5/6のような本体価格だけで数十万円するようなハイエンド機種にしか搭載されていない10bitのLogの撮影もできるようになりました

もちろん、カメラの性能は本格的な一眼レフカメラに敵わない部分もありますが、iPhoneがあればLog撮影が誰でもできる意義は大きいと感じています

iPhoneをきっかけに本格的なLog撮影と編集にチャンレンジする人が増えるとうれしく思います

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