iPhoneは暗い場所での動画撮影が苦手です
暗い場所で動画撮影すると映像にノイズが発生し画質が劣化してしまいます
ノイズが発生してしまう原因はiPhoneに搭載されているカメラセンサーのサイズが非常に小さい為で、暗い場所の撮影において劇的にノイズを減らす方法はありません
しかし、カメラの設定や撮影方法を工夫して、暗い場所での撮影で発生するノイズを軽減することは可能です
本記事ではその具体的な方法について解説します
暗所撮影でノイズが発生する原因と対策
暗い場所で撮影した時に映像にノイズが発生してしまうのは、ISO感度が上がってしまうことが原因です
カメラセンサーに入った光をどの程度電気的に増幅するかを決めるのがISO感度です
ISO感度を上げるほど暗い場所を明るく撮影することができますが、ISO感度を上げた分ノイズが増えます
つまり、暗い場所での撮影でノイズを減らす為には
- カメラセンサーに入る光の量を増やして
- できる限りISO感度を低く抑える
ことが必要になります
カメラセンサーに入る光の量の調整方法(絞り・シャッタースピード)
一般的なカメラの場合、カメラセンサーに入る光の量は、「絞り(f値)」と「シャッタースピード」で調整します
絞り(f値)・シャッタースピードと明るさには以下のような関係があります
絞りを開き、シャッタースピードを遅くすれば、カメラセンサーに入る光の量を増やすことができます
ただし、iPhoneの場合には、搭載されているそれぞれのカメラ(広角・望遠・超広角)によって絞り値(f値)が異なり、且つ固定です
以上のことを踏まえ、暗い場所の撮影において、ノイズの少ない動画を撮影する為の具体的な方法を解説していきます
ノイズの低減の方法(iPhone標準カメラアプリ・マニュアル撮影カメラアプリ 共通)
超広角カメラと望遠カメラはなるべく使わない
iPhone7 plusから望遠カメラが搭載され、iPhone 11 Proからは超広角レンズも搭載されています
普段はあまり意識することはありませんが、広角カメラ、望遠カメラ、超広角カメラの中でもっと絞り(f値)が小さく明るいカメラは広角カメラです
iPhone11 proより前の広角カメラと望遠カメラだけの機種についても広角カメラの方が絞り(f値)が小さく明るいです
明るいレンズを使用すればその分自動でISO感度が低く抑えられるので、結果として広角レンズで撮影するとノイズが少ない映像になります
- iPhone11 pro シリーズ/iPhone12 Proシリーズに搭載されているカメラの絞り値
- 広角カメラ:f1.8・・・一番明るい
- 望遠カメラ:f2.0 (iPhone11 Pro/iPhone 12 Pro), f2.2 (iPhone12 Pro max)・・・二番目に明るい
- 超広角カメラ:f2.4・・・一番暗い
スローモーション撮影しない
暗い場所でスローモーション撮影はおすすめしません
暗い場所でスローモーション撮影をするとかなり大きなノイズが発生します
iPhoneの標準カメラアプリのスローモーションモードでは120fps、240fpsの2つのフレームレートを選択することができます
これらの撮影フレームレートを選択すると、コマ数を稼ぐ為に通常の撮影モードと比較してより早いシャッタースピードが設定されてしまうので、カメラセンサーに入る光の量が減り、ISO感度が上昇しノイズが大きくなります
ノイズの低減方法(マニュアル撮影カメラアプリ編)
マニュアル撮影に対応したカメラアプリを使うと
- ISO感度
- シャッタースピード
を独立して設定することができるので、より踏み込んだノイズ低減の対策を行えます
等ブログではマニュアル撮影に対応したアプリとしてFiLMiC ProとMoment Pro Cameraの2つをおすすめしてます
FiLMiC Pro:プロユースの動画専用カメラアプリ
ISO感度はできる限り小さく、100以上は上げない
マニュアル撮影が可能なカメラアプリでISO感度を調整します
一眼レフカメラの場合にはISO感度が1000以上であってもクリーンな映像で撮影することができますが、センサーサイズが小さいiPhoneの場合は、一眼レフカメラの感覚でISO感度を上げてしまうとノイズだらけの映像になってしまいます
どこまでノイズを許容できるかは人それぞれの感覚によりますが、個人的にはISO感度は100以下に抑えることをおすすめします
それでも映像が暗い場合はシャッタースピードを限界まで遅くする
本ブログでは映像に自然なモーションブラーを作り出す為に、「シャッタースピードは撮影フレームレートのおよそ2倍に設定する」という基本ルールをお伝えしてます => 【初心者向け】動画撮影の為のカメラ設定・徹底解説
例)撮影フレームレート:24fps => シャッタースピード:1/50秒〜1/60秒程度
暗い場所の撮影においてISO感度を最小値から100の範囲に設定した時に、映像に十分な明るさを得ることができなかった場合に、例外的にこのルールを破りシャッタースピードをフレームレートに合わせて限界値まで下げます
撮影フレームレートが24fpsの場合のシャッタースピードの限界値
撮影フレームレートが24fpsの場合、1/50秒や1/60秒で設定していたシャッタースピードを1/24秒まで遅くします
シャッターを開ける時間が2倍になるのでカメラセンサ内に取り込まれる光の量も2倍になります
これ以上シャッタースピードを遅くすると1秒間当たりにカメラが撮影する静止画の枚数が、フレームレート(1秒間あたりのコマ数)を下回り、いわゆるコマ落ちが発生してしまう為NGです
シャッタースピードを限界まで遅くするデメリット
シャッタースピードを遅くすると映像のブレが大きくなってしまう弊害があります
歩く人程度の速度であればシャッタースピードを遅くした影響はそれほど感じませんが、走る車などより早い速度で動くものを撮影した場合に動きのブレが目立ちます
ISO感度を上げる vs シャッタースピードを遅くする どっちがいい?
同じ映像の明るさを得る場合に、「ISO感度を上げてノイズが発生した映像」と「シャッタースピードを遅くしてブレが大きいがノイズを抑えた映像」を比較した場合に、シャッタースピードを遅くした方が良い結果が得られると感じます
私自身は夜の撮影時はシャッタースピードは限界まで下げ、ISOを最大100を目安に設定しています
それでも十分な明るさが得られない場合には撮影を諦めます・・・
どのような設定が良いかは個人の感覚によるところも大きいので、実際に試して比較されることをおすすめします
暗所撮影を助けてくれる機材
外付けの望遠・広角レンズ
暗い場所での撮影はなるべくiPhoneの主カメラである広角カメラを使うことをおすすめしましたが、望遠や超広角の映像が欲しいということもあると思います
暗所で超広角や望遠映像を撮影したい場合には外付けレンズを使うことをお勧めします
暗所性能に最も強い広角カメラに広角や望遠の外付けレンズをつけることでノイズの少ない映像を撮影することができます
以下の動画はiPhone12 Pro Maxの望遠カメラ/超広角カメラと広角カメラにMomentの外付けの望遠レンズ/広角レンズを装着して暗所での映像を比較した動画です
iPhone12 Proの超広角カメラ/望遠カメラはノイズが非常に多いのに対して、広角カメラにMomentの外付けレンズを装着した映像はノイズが低く抑えられていることが分かります
外付けレンズを使った場合にはiPhoneのカメラと全く同じ画角にはなりませんが、夜間に超広角や望遠の映像を撮影した場合には外付けレンズによる画質改善の効果は絶大です
外付けレンズはMoment社のものがおすすめです
Momentの外付けレンズについてはこちらの記事で詳しく解説しています => Moment外付けレンズ&ケースレビュー|公式サイトでの購入方法も解説
*リンクをクリックするとメーカーの各製品ページにジャンプします
三脚・ジンバル
シャッタースピードを遅くすると、被写体の動きのブレだけでなく、手ブレの影響受けやすく映像全体がブレてしまいます
シャッタースピードを遅くして撮影する場合には、手ブレを抑える為に三脚やジンバルを使うことで手ブレを抑制し手持ち撮影よりも良い結果を得ることができます
まとめ
- 暗い場所で撮影した時に映像にノイズが発生してしまうのは、ISO感度が上がってしまうことが原因
- 暗い場所でノイズを抑えて撮影する方法
- 超広角カメラと望遠カメラはなるべく使わない
- 望遠カメラ・超広角カメラよりiPhoneの主カメラである広角カメラ明るい映像を撮影できます
- スローモーション撮影しない
- シャッタースピードが早くなるので、結果としてISO感度が高くなりノイズが増えます
- マニュアル撮影可能なカメラアプリを使う
- ノイズを抑える為にISO感度はできる限り小さく、100以上は上げない
- それでも映像が暗い場合はシャッタースピードを限界まで遅くする
- シャッタースピードを限界まで遅くした場合は三脚やジンバルを使って極力手ブレを抑える
- 望遠、超広角の映像が欲しい場合は外付けレンズを使う
- 超広角カメラと望遠カメラはなるべく使わない
コメント
はじめまして。
普段iPhoneでよく動画撮影しているKeiと申します。
本日、iPhone 13 pro maxを購入し、動画撮影のテクニックを調べていたところでこちらにたどり着きました。
とても綺麗な動画で驚きました!
iPhone12 pro maxも購入して使っていたのですが、この投稿の動画のように、夜の強い光源があるところでゴーストを出さずに綺麗に撮るテクニックがわかりません。
純正のカメラアプリでも、Filmic proでも、動画中にあるような夜の街の撮影ではゴーストが出そうなものですが、どんな撮影方法を使われてますか?
Momentの外付けレンズを使うことで回避できるのでしょうか?
急に訪問して質問すみません!
教えていただけると幸いです。
お問い合わせありがとうございます
iPhone13 Proの購入おめでとうございます
私もiPhone13 Proを購入しましたが出遅れてしまい手元に来るのは少し先になってしまいます、、
ご質問のゴーストについて
仰っているゴーストは、夜間のような暗い環境で強めの光を撮影した際に発生する緑色っぽいゴーストのことと思います
残念ながら私自身は特殊な撮影方法は使っておらず、ゴーストが目立つ映像素材の使用をさけている、というのが回答となります
私がYouTubeにアップしている動画にも僅かにゴーストが発生しているシーンがあったように記憶しています
もしかすると、Momentのような外付けのレンズを使うことでゴーストを低減できる可能性はありますが、私自身はまだ検証できていません
ゴーストに関して解決方法が有れば記事にしたいと考えていますが、現時点で良い方法は見つかっておりません
ご期待に沿う回答ができずに申し訳ありません
ご丁寧にご回答いただき、ありがとうございます!
iPhone13は予約開始とともにサイトが繋がりにくかったですね。
手間取ってる間に欲しかった黒?グレー?は品切れになり、ブルーのを買いました。
さて、ゴーストの件、ありがとうございます。
特殊な工夫があるわけではないんですね!
動画観た感じ、感覚的にはゴースト出そうな気がしたのですが、実際の現場の明るさはわからないので、問題なかったということですね。
(全体的に明るく、特に強い光源があるということでもなかったんですかね)
調べたところ、iPhoneのレンズはやはり一眼とかと違ってゴーストが出やすいようで、Momentのようなレンズを使うと軽減される、というのはどこかで読んだ気がします。
Momentのレンズは欲しくても買っていなかったので、この機会に買って自分でも検証してみたいと思います!
長々とすいません。
とても参考になるブログです。
これからも頑張ってください!
お返事ありがとうございます
ブルーを購入されたのですね
私は争奪戦に完全に負けて、、、シルバーが恐らく来週届きます
Momentのレンズでゴーストを低減できる可能性があるのですね
貴重な情報ありがとうございます
ご存知かもしれませんが念の為、
Moment公式のYoutube(https://youtu.be/2uKBcG-5iP8)によると、iPhone13シリーズでMomentのレンズが使えるか検証中であるももの、初期のテストでは良い結果が出ているとコメントされてました
確定情報ではありませんがiPhone13でもMomentのレンズは使えそうですね
iPhone13用のケースがオーダーできるようになってますが、レンズを取り付ける為のレンズマウントが開発中で、現時点でオーダーすることができません
私はケースだけ先に買ってしまう予定ですが、その場合、後からレンズマウントだけを購入する必要がある点ご注意下さい(送料も余計にかかってしまいます)
Momentのレンズでもし良い結果が得られたら、またコメント頂けると幸いです
こんにちは。はじめまして。iPhone+FilmicProでの動画撮影を調べててたどり着きました。
色々と調べたのですが私はLiteChaserのケースとNDフィルターを今回は試すことにしました:)。
iPhone良いんですけどとにかく映像素子の物理的な大きさの制限はカメラには叶いませんね。大型化を望みます。
あとは撮影の基本スキルを身に着けないと。。。